船井美佐個展 drive〜領域の境界を旅する〜 レビュー

京都新聞 2009年2月14日土曜朝刊 <美術>

「境界を超えるイメージ 」

京都出身の船井美佐は、これまで一貫して物質感を排した線画を描いてきた。花や動物の輪郭をからませながらつむぎだす増殖やメタモルフォース(変容)のイメージ。今回出品したのはそうしたドローイングを動画にした映像作品だ。
動物、植物、鉱物、自然の風景。森羅万象が線として生成し、変形し、消滅を繰り返す。生命進化や細胞分裂を思わせるうごめきは、絵として定着させる以前の船井のイメージの世界だ。
2007年に国際芸術センター青森で開かれた「裏糸」展では縦6メートル×横17メートルという圧倒的な規模の壁画で観客を三次元的な浮遊感に誘った。絵の地と図とを反転させたり、動きのある線で目をくらませたりする仕掛けに見られるように、船井の作品は絵画を入り口に観客を時空を超える旅へと誘おうとしている。
今回の個展で発表した映像「ケーキの交尾」と、塩辛まみれの女性の写真は「かわいい」というイメージの皮膜を裂き、内に隠れていたグロテスクやエロスを噴出させる作品。日常に眼にする物を通してもイメージの境界を超えるきっかけがあることを指し示す。
高校・大学を通して日本画を学んだ船井は、遊びと呪術性という日本美術の伝統を血肉化している。それを現代アートの世界に融合させようとする制作スタンス自体も境界を超える旅だ。

(shin-bi=烏丸通四条下ルCOCON烏丸3F 3月1日まで)(沢田眉香子・著述業)