船井美佐 個展 [ nirvana涅槃−shineplexus−]

「キラキラ☆ジェネレーション」

ギャラリーレイ 2006年7月1日(土)−9日(日)

三瀬夏之介、山本太郎、船井美佐、岡本麻紀子をリレー形式で取り上げる展覧会「キラキラ☆ジェネレーション」。高度成長後の1970年代、モノが豊かな時代に生れた彼らは、物質ではない何かを「キラキラ」という言葉で表し、その意義を求める。
即興で描かれた船井の壁画は圧巻である。この花鳥風月の美しいイメージは、赤い等幅の曲線だけで描かれたシンプルなものでありながら、まるでうごめき増殖する生命体のようにも見える。壁の左手には、ギャラリーの出入口となる透明なガラスのドアがある。壁画はこのドアにより一旦中断され、ドアの先にある右側の壁へと続く。このドアの介入が、ギャラリーの内部からみると表面である壁の表と裏を転換する。それはまたイメージが作り出す非現実の空間と、ドアを介したリアルな空間の転換でもある。
ビニールを宙に下げた作品に形づくられた動植物のイメージが、壁に影となって映し出される。宙を浮遊するビニールも壁の影も、たがいの希薄なイメージを支え合い空間を構築する。この希薄さの中にある唯一の確かさは、ビニールの下部から床まで垂れ下がる1本の糸と、床で絡まりあう数色の糸の存在にある。ビニールや影の透明感と対比する鮮やかな色彩の糸は、地と宙を、そして現実と非現実を結ぶ。
アクリルブロックを使用した作品には、細胞のような丸い模様が描かれている。このブロックを積み上げると、丸い模様が重なり合いイメージが構成される。この作品にも、アクリルの透明感やイメージの実在のなさと、ブロックの下に敷かれたファーの毛羽立つリアルな素材感が対比されている。
船井の作品は、現実と非現実、有と無の境界の揺らぎに漂う。それは、ちょうど物質の豊かさを求めた高度成長期と、仮想現実を楽しむデジタル時代の狭間にある70年代を象徴しているかようだ。そして揺らぎ、さまよいながら、細胞のように増殖する有機的・肉体的生命感を生み出す、女性らしいしなやかな強さ、そこに船井の「キラキラ」が在る。

森 美樹 (愛知県立美術館学芸員)

美術手帖 2006  9月号 ギャラリーレビュー